前回の記事の続きです。
ビジョナリー・カンパニー2では凡庸な企業から偉大な企業への変革を遂げるために必要な条件が数多く述べられている。その中でも、そして全編を通して印象深かったのが「複雑系」の考え方だ。
特に「弾み車と悪循環」という章に繰り返し述べられている。有名になった企業に対し、人は何か劇的な要因があって大きく成長したのだと思い込みがちである。しかしそれは有名になるからの目に見えない小さな要因の積み重ねによって、少しずつ変化した結果なのだ。もちろんなかには大きな要素といえるものもあるが、それは決して十分条件ではなく数多くの要因のひとつでしかないと偉大な経営者は言う。そしてその要因というものも後から見えてくるものであって、変化の中にあってはそれに気づかないものも多いのだ。
この複雑系ともいえる考え方はドコモの企業研究で読んだ下記の本に通じるものがある。
iモードビジネスの裏にある念密な戦略が語られている本だ。なにより既存の技術を組み合わせでサーバー・メーカー・コンテンツとの相互成長を生んだその先見性には大きな驚きがあったが、何より「複雑系」という考え方を大切にしているのが印象的であった。一企業で大きな変化を引き起こすのは難しい。複雑系理論の考えのもと、未知数の要素が組み合わさることで生物のように成長していく。ドコモはiモードという「コンセプト」を提供するのみで、相互に成長する環境を与える。それは大きな革命ともいえる変化を引き起こしたが、その要因は計算では導くことのできないさまざまな要素であるという。
これは生きていくうえでも応用できるとても大切な考え方ではないかなと思った。
自分の今までを振り返ってみても、たしかに大きな変化のきっかけというものは些細な事象の組み合わせだったりする。あの失敗があったからこそ、別の成功が生まれたということも多い。
大切な軸を持って、信念をもって生きること。これがなによりも大切で、すべてを支配し変えていくのは不可能なんだ。変化は生むものではなく生まれるものかもしれない。
戻りますが、ビジョナリー・カンパニー2は図書館で借りて読んだ後に、改めて買って読もう思ったはじめての本かもしれません。それぐらいすばらしい本ということです。未読の方はぜひ読んでみてください。
タグ: ビジネス
大学3年間さまざまなコミュニティで活動し、たくさんの人に出会ってきた。バイト、サークル、学内企画‥。とくにオーケストラは自校のものに所属しながらも、他大学の活動にいろいろな形で触れてきたと思う。これらの経験から、ひとつ確信をもったことがある。
人は環境で変わる、ということだ。
まぁ当たり前といえばそうなのだが、たとえばアルバイトにおいて遅刻の多い仕事場とそうでない仕事場の違いは何だろうか。時間にきっちりする人が前者に集まり、時間にルーズな人が後者に集まるのではない。職場の風土が人を変えるのである。もちろんキャラクターと合わなくてやめる、といったことは多くあるが、少なくとも自分の過ごした風土はその人の価値観に大きな影響を及ぼす。ある大学生が同じようにアルバイトを続けていたとしても、その所属する組織によって怠惰にも勤勉にもなると思う。
上の例は極端すぎるかもしれないが、コミュニティの運営面に携わってみると「ある人がそのもつ能力を発揮できるかという点で、環境はとても重要な要素である」ということを強く感じる。変革を目指したくても、保守的な空気というのはなかなか変わるものではない。それぞれの組織での、自分の理想と現実の落としどころを目指すことが一番大切という気もするけれど‥
そんな中友達に薦められてこの本を読んだ。
ビジョナリー・カンパニー 2 – 飛躍の法則
本当に良い本だと思った。かちこちになった自分の「信念」を見つめ直し、またもやもやした自分の「目指すべきもの」をはっきりさせることができたと思う。内容は「良い企業」から「偉大な企業」になるために必要な要素を、緻密な調査、インタビューやデータに基づいて論じたものだ。企業経営という視点で語られたものではあるが、ここで上げられていることはあらゆる組織運営、ひいては人の生き方を見つめる上で大いに応用できる考えだ。
この中で印象深かった一文がこれだ。
情熱は作り出せるものではない。「動機付け」によって情熱を感じるよう従業員を導くこともできない。
本文p.173より
本書では組織運営において「適切な人をバスに乗せ、適切でない人をバスから降ろす」ことがまず大切であると述べられている。規律やするべきことといったことはあとから付いてくるというものだ。発見の多い本書の中でも、これは特に新鮮な考え方であった。それは上にも書いたように「組織が人をつくる」という側面の大きさを今までのコミュニティ経験から強く感じていたからだ。
組織を動かす、特に大人数のそれを目指す中では「人の動機付け」は常に大きな壁だった。見えない空気というものは本当に変わらないのだ。鶴の一声で人を動かすカリスマ性があるわけではない私は、本当にさまざまなアプローチをしてきた。そしてだんだんと疲れていき、へなへなと落としどころに逃げ込むというパターンが正直多かった。
しかし「動機付けの必要のない」、「適切な人を選ぶ」ことが何よりも大切であるという本書をみて、自分の努力の方向性というものを改めて考えさせられた。ただ本書でも「重要な情熱を注げる何か」という目標・核の策定が非常に大切であるとは述べられており、それが結果として大きな動機付けのもととなるのだと思う。これは自分自身あまりできていなかった。
誰がトップになっても持続できる組織作りの重要性は今までの経験からも感じてきたが、だからといって人選がなによりも大切なことには変わりない。これは本当に大切なことだ。人が「活きる」組織の本質はここにあるのだと思う。
もうひとつ全編を通して感じたことがあるが、それは次回に。企業を選ぶということがどういうことなのか、そういった視点からも得ることが非常に多い本。就活生は読むと非常にためになると思います。
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